
健康診断
雇入れ健康診断を拒否
できますか?
入社時の健康診断は、法律で定められた重要な検査ですが、「本当に受けなければならないの?」「雇入れ健康診断を拒否できますか?」と疑問をお持ちの方も少なくありません。
確かに、健康診断を受診するには時間がかかりますし、手間もかかります。
また、検査結果の取り扱いやプライバシーについて不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、企業が健康診断を実施する背景には、職場の安全確保や従業員の健康保護という大切な目的があります。
この記事では、入社時の健康診断について「なぜ必要とされているのか」「どのような検査が行われるのか」「拒否した場合にどのような問題が生じる可能性があるのか」、さらに「企業側の考え方」や「困ったときの対応方法」まで、わかりやすく解説します。
読めば「雇入れ健康診断を拒否するメリット・デメリット」が一目瞭然です。
皆さまが最適な判断をするための参考になれば幸いです。
目次
健康診断なるべく早く結果がほしい
雇入れ健康診断の基本情報
健康診断が実施される大切な理由

企業が皆さんの健康を気にかける本当のわけ
入社時の健康診断は、労働安全衛生法という法律によって企業に義務付けられている大切な検査です。
企業には従業員の健康と安全を守る責任があり、新しく採用した方の健康状態を確認することで、働き始めてからの問題を減らすことを目指しています。
たとえば、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が治療されないまま重い仕事をすると、体調が悪化したり、思わぬ事故につながる可能性があります。
このような問題を防ぐためには、早く発見して早く対応することが大切です。
また、健康診断は働く方にとっても自分の健康状態を客観的に知る良い機会になります。
検査結果をもとに、早めに治療を始めたり、生活習慣を見直したりするきっかけになるでしょう。
さらに、検査費用は多くの場合、企業が負担してくれるので、個人のお金の負担が少なくて済むという良い点もあります。
このように入社時の健康診断は、企業と従業員が協力して、より良い職場環境を作るための欠かせない仕組みとして大切にされています。
年に一度の健康診断とどう違うの?
入社時だけの特別な健康チェック

健康診断というと、多くの方は会社で毎年1回行われる「定期健康診断」を思い浮かべるかもしれません。
しかし、入社時の健康診断はこれとは少し違います。
定期健康診断は、すでに働いている従業員全員を対象に行われますが、入社時の健康診断は、新しく会社に入る方だけが受ける検査です。
多くの場合、入社の手続きの一部として実施されます。
会社によっては、入社する前に指定された病院で検査を受けて、その結果を提出するよう求められることもあります。
検査の内容は定期健康診断と似ている部分が多いですが、入社したばかりの時は、担当する仕事や職場環境に適しているかを判断するために、より詳しい検査が行われることもあります。
また、春の新入社員が多い時期や、中途採用が集中する時期には、病院が混み合って予約が取りにくくなったり、結果が出るまでに時間がかかることがあるので、早めに準備しておくとよいでしょう。
新しい職場で働き始めるという大切な節目だからこそ、健康状態をしっかり確認して、安全に仕事を始めるための重要な一歩となります。
入社時の健康診断が法律で決められている理由
労働安全衛生法で定められた大切なルール

会社の責任と従業員の協力が作る安全な職場
労働安全衛生法という法律では、企業が従業員に健康診断を行い、その費用を負担し、検査結果を記録して保管することを義務づけています。
これは、企業が新しく雇う方の健康状態を確認し、必要に応じて仕事の内容や配属先を調整する責任があるということです。
一方で、従業員の皆さんにも、企業がこの安全を守る義務を果たせるよう協力する立場があると考えられています。
つまり、「正当な理由がない限り、会社が指定した健康診断を受ける義務がある」という考え方が一般的です。
もし健康診断を受けないと、企業はあなたの健康状態を正確に把握できず、安全管理に問題が生じる可能性があります。
例えば、体力的に負担の大きい部署に配属されてしまうと、持病が悪化したり、事故のリスクが高まったりすることがあります。
そうなると、企業だけでなく、あなた自身にも大きな不利益となるでしょう。
このような理由から、入社時の健康診断は、企業と従業員の両方にとって、リスクを減らし安全を守るための重要な役割を担っているのです。
どんな検査があるの?健康診断の内容
受ける検査項目について知っておこう

入社時の健康診断では、基本的に次のような検査が行われます。
身長・体重の測定、視力・聴力の検査、血圧測定、胸部レントゲン検査、尿検査、血液検査、そして医師による診察です。
血液検査では、血糖値や脂質、肝機能などを調べます。
これによって、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病のリスクを早めに知ることができます。
働く場所によっては、特別な検査が追加されることもあります。
例えば、化学物質を扱う職場では、有機溶剤や鉛などの影響を調べる検査が行われることがあります。
また、会社の規模や業種によっては、心電図や腹部エコーなどの追加検査が実施される場合もあり、より幅広い健康状態を確認できる利点があります。
ただし、検査項目が増えると結果が出るまでに時間がかかることがあります。
仕事の開始日に間に合わない可能性もあるので、早めに準備しておくことが大切です。
どのような検査があるにせよ、入社時の健康診断は、新しい職場で安全に働き始めるための大切な第一歩です。
雇入れ健康診断を断ることはできるのですか?
拒否することで生じる可能性のある問題

「断れる?断れない?」正しく理解しましょう
実際のところ、入社時の健康診断を「完全に断る」ことは難しいと考えられます。
法律では企業に実施する義務があり、従業員の側にも協力する義務があります。
正当な理由なく断り続けると、雇用契約が成立しにくくなったり、安全に働ける環境が確保できないと判断されるリスクがあるためです。
例えば、体力的に大変な部署で働く可能性があるのに健康診断を受けないとすれば、企業は「安全に配慮する義務」を果たすことができず、問題が生じる可能性があります。
一方で、特別な事情がある場合は別です。
例えば、妊娠中でレントゲン検査を避けたい場合や、宗教上の理由で特定の検査を受けられない場合には、企業と相談のうえ、別の検査方法を選ぶことが認められることもあります。
どのような場合でも、ただ断るのではなく「なぜ受けられないのか」を具体的に説明し、必要に応じて医師の診断書などを用意して、企業と話し合うことが大切です。
健康診断を断るとどんな問題が起きる可能性があるの?
採用や雇用条件に影響することもあります

入社時の健康診断を断ると、企業はあなたの健康状態を正確に把握できないまま雇用契約を結ぶことになり、後々問題が発生する可能性があります。
例えば、実際には心臓や血管の病気があったにも関わらず、それを知らないまま体に負担の大きい仕事に就いて症状が悪化したとします。
そうなると、企業が「安全に配慮する義務を果たさなかった」として責任を問われるリスクもあります。
反対に、働く方の立場から見ても、自分の持病や気づいていない病気を見過ごしていたことで、仕事中の事故が起きたり、長期間休まなければならなくなったりするリスクが高まります。
また、企業によっては「雇用契約を結ぶ条件として健康診断を受けること」を明確に定めている場合があり、断ると採用が取り消されたり、内定が保留になったりする可能性もあります。
このような問題を避けるためにも、どうしても受けられない事情がない限り、入社時の健康診断を受けることが、スムーズに新しい職場でスタートを切るための最も良い選択と言えるでしょう。
企業側が健康診断で本当に見ているもの
会社にとっての健康診断の意味

企業が大切にしているのは「病名」よりも「安全に働けるかどうか」
一般的に、企業が入社時の健康診断を重視する理由は、「この方が安全に働ける状態かどうか」を確認するためです。
企業は病名だけを見て採用を取りやめるというよりも、例えば持病があっても業務に大きく影響するかどうか、職場環境に適応できそうかといった点を総合的に判断する材料として健康診断を活用することが多いと思われます。
言い換えれば、何らかの病気や症状があっても、適切なサポートを受けながら働くことができるのであれば、企業としても積極的に協力する姿勢があります。
実際に、能力のある人材が安心して働けるように、勤務時間や勤務場所を調整したり、休憩時間を増やしたりするなどの配慮を行う企業も少なくありません。
そのため、病気や症状を隠すよりも、健康診断の結果を正確に会社と共有し、必要な配慮やサポートを受けるほうが、長い目で見たキャリア形成にとっても良い選択と言えるでしょう。
健康診断の結果は誰に知られるの?
診断結果など個人情報の扱い方について

健康診断の結果は、あなたのプライバシーに関わる大切な情報です。
そのため、産業医や人事担当者など、限られた関係者以外に勝手に公開されることは一般的にありません。
多くの企業では、従業員の健康情報を「注意が必要」「経過観察が必要」「制限なく働ける」といった大まかな区分で扱い、具体的な病名や検査の数値は管理部門だけが把握する仕組みになっていることが多いです。
もし「本当に個人情報がきちんと守られるのだろうか」と不安を感じる場合は、健康診断を受ける前に人事担当者や産業医に次のような質問をしておくとよいでしょう。
・「検査結果はどのように保管・共有されるのですか?」
・「上司や同僚に詳しい数値が知られることはありますか?」
しっかりとしたプライバシー保護の体制が整っている企業ほど、このような質問に対して明確で丁寧な回答をしてくれるはずです。
よくある質問と回答
すっきり解決!健康診断の疑問にお答えします

いつまでに受ければいい?過去の検査結果は使える?
入社時の健康診断については、様々な疑問をお持ちの方が多いようです。
ここでは、よくある質問にお答えします。
受診する時期はいつがよいですか?
企業から指定があれば、それに従うのが基本です。
特に指定がない場合は、入社の前後できるだけ早い時期に受診し、結果を速やかに提出するとよいでしょう。
健康診断の結果には有効期限がありますか?
法律で明確に決められてはいませんが、一般的には3か月以内の検査結果であれば「現在の健康状態を反映している」と見なされることが多いです。
別の病院で最近受けた健康診断の結果を使うことはできますか?
すでに別の医療機関で似たような検査を受けていて、その検査項目が企業の要求を満たしているのであれば、企業によっては過去の結果を認めてくれる場合もあります。
ただし、企業が特別な検査項目を設定している場合や、胸部レントゲン撮影の日付が古い場合などは、改めて検査を受けるよう求められることもあります。
不安な場合は、事前に企業の担当者に確認しておくとよいでしょう。
どうしても健康診断を受けられない場合の対処法
特別な事情がある方へのアドバイス

代替案を提案して話し合いましょう
実際に、健康診断の特定の検査を受けられない正当な理由がある場合もあります。
例えば、妊娠中でレントゲン検査を避けたい方や、宗教上の理由で特定の検査を受けられない方などです。
妊娠中もしくは妊娠の可能性があるので、胸部レントゲン検査を省略することは、一般的な社会通念上は問題ないように思います。
そのような場合は、「すべての健康診断を断る」のではなく、「問題となる検査だけを別の方法に替える」という提案をすることが適切です。
例えば、胸部レントゲン検査の代わりに医師の診断書を提出する、または超音波検査やCTなど別の検査方法を利用するなどの提案ができます。
しかしながら、よほどの理由がない限り、企業が個別に対応してくれるのかは実際のところ難しいと思われます。
企業としても、従業員を守りながら安全に配慮する義務を果たすためには、すべてを断るよりも代替案を提示してもらうほうが受け入れやすいかもしれません。
また、どうしても検査全体を受けるのが難しい場合は、入社の時期や雇用条件の調整なども含めて話し合うことが必要かもしれません。
お互いが納得できる解決策を見つけるためにも、早めに丁寧に相談することが大切です。
健康診断との上手な付き合い方
健康診断を受ける・受けないのメリットとデメリットを知りましょう

バランスのとれた判断で、安心して新しい一歩を踏み出すために
入社時の健康診断は法律で定められた大切な制度であり、企業と従業員の両方にとって利益をもたらす重要な手続きです。
正当な理由なく断り続けると、雇用契約がうまく結べなかったり、後々の事故や健康問題を引き起こすリスクが高まる可能性があります。
一方で、どうしても受けられない事情がある場合には、医師の診断書を提出したり、別の検査方法を提案したりして、企業との間で納得のいく方法を探すことができます。
企業の側も、従業員の健康状態を正しく把握し、安全に配慮する義務を果たすために、完全に断るよりも代わりの方法を提案してもらうほうが建設的な解決につながるでしょう。
健康診断の結果に関するプライバシーについても、産業医や人事部門など限られた範囲でのみ管理されることが多く、情報が外部に漏れないような仕組みが整えられています。
大切なのは、この制度の目的やリスクをきちんと理解し、もし何か問題があれば企業と話し合って、お互いが納得できる解決策を見つけることです。
入社時の健康診断は、スムーズに仕事を始めるための助けとなるものであり、ご自身の健康管理の第一歩でもあります。
この記事が参考になり、安心して新しい職場での一歩を踏み出せることを願っています。