健康診断
雇い入れ時健康診断は省略
できますか?
会社に入社する時の健康診断、「必須なの?」「省略できないの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
実は、入社時の健康診断は労働安全衛生法で定められた大切な手続き。
でも、ただ法律だから行うのではありません。
従業員の健康を守り、安心して働ける職場をつくるための第一歩なんです。
ここでは、入社時の健康診断について、誰が対象なのか、いつまでに受ける必要があるのか、どんな検査が必要なのかなど、現場で役立つ情報をご紹介します。
また、健康診断を省略できるケースや、効率的な進め方についても詳しく解説していきます。
人事担当者の方はもちろん、これから入社される方にも参考になる内容となっています。
一緒に確認していきましょう。
目次
健康診断なるべく早く結果がほしい
雇入れ時健康診断の基礎知識
目的と重要性
従業員と企業を守る健康診断の意義
新しく社員を迎える会社が実施する健康チェック。
「そもそも、雇い入れ時健康診断は必ずやらないとダメでしょうか?」「雇入れ時健康診断は省略できますか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
これは法律で決められた手続きというだけでなく、実はとても大切な意味があることをご存知でしょうか。
なぜ入社時に健康チェックが必要なのでしょうか?
実は大きく分けて3つの理由があります。
一番目は、その人に合った仕事内容を判断するためです。
たとえば、ずっと立ち続けなければならない仕事なのに、足に持病があったら大変です。
そのようなことが健康診断で分かれば、その人には別の仕事を提案できます。
二番目は、会社が社員の健康を守る約束を果たすためです。
健康状態をしっかり確認することで、その後の体調管理にも役立ちます。
健康診断をすることが、事故や病気の予防にもつながっているんですね。
三番目は、社員自身が健康に目を向けるきっかけにするためです。
新しい環境に入る時に自分の健康状態を知ることで、これからの体調管理に気をつけるようになります。
このように、入社時の健康チェックは会社と社員の双方にとって、とても意味のある取り組みです。
これは単なるルール上のものではなく、働く人と企業それぞれに大切な役割を果たしているのです。
また、最初の健康チェックの結果は、その後の定期検査と見比べる時の基準にもなります。
年々の体調の変化を見守る上で、入社時の健康状態を知っておくことはとても重要になってきます。
労働安全衛生法が定める健康診断の必要性
働く人の健康を守るため、労働安全衛生法では企業に様々な義務を課しています。
その中でも特に重要なのが、入社時の健康チェックです。
この法律では、「労働者を雇い入れるときは、健康診断を行わなければならない」と定めています。
これは企業の規模に関係なく、すべての会社に当てはまるルール。
従業員を守るための大切な取り組みとして位置づけられているんです。
なぜ法律でここまで厳しく定められているのでしょうか?
それは、働く人の健康状態を知らないまま仕事を始めると、思わぬトラブルが起きる可能性があるからです。
例えば、夜勤が多い職場なのに持病があったり、重いものを扱う仕事なのに腰に不安があったりすると、ケガや病気、事故などのリスクが高まることが挙げられます。
そんな状況を防ぐためにも、入社時の健康チェックは欠かせません。
また、働く環境が従業員の体に合っているかを確認することは、企業の大切な責任でもあります。
法律では、これを「安全配慮義務」と呼んでいます。
入社時の健康状態をしっかり把握することで、その後の体調管理をスムーズに進められるようになるのです。
つまり、この法律は従業員と会社の両方を守るためのものといえます。
「安心して働ける環境づくり」を目指すための基本となるものが、ひとりひとりの健康チェックといえるでしょう。
会社がこの健康チェックを怠ったことで、後々大きな問題になった…というケースも。
だからこそ、健康診断が法律でしっかりと定められているのです。
「常時使用する労働者」の定義と適用範囲
「常時使用する労働者」、普段あまり耳にしない言葉ですね。
しかし、これは会社の安全衛生管理を考える上でとても大切な考え方です。
特に、従業員が50人以上いる会社では、産業医を置く必要があるかどうかの判断基準にもなります。
では、誰が「常時使用する労働者」なのでしょうか?
まず、正社員は間違いなく対象となりますが、それだけではありません。
パートやアルバイト、契約社員でも、次のどれかに当てはまる人は「常時使用する労働者」になります。
・期間の定めのない契約で働いている人
・1年以上働く予定の人、または更新を重ねて1年以上働いている人
・正社員の4分の3以上の時間で働いている人
具体的な例を見てみましょう。
コンビニで週3日、1日5時間働くAさん。
正社員の労働時間(週40時間)と比べると、週15時間はその4分の3未満。
この場合は対象外です。
一方、スーパーで週5日、1日6時間働くBさん。
週30時間は正社員の4分の3以上になるので、対象となります。
特に注意が必要なのは、従業員が50人以上いる会社です。
この場合、パートやアルバイトも含めて全員に健康診断が必要です。
「常時使用する労働者」かどうかを気にする必要はありません。
このように、会社の規模や従業員の働き方によって、健康診断の対象者は変わってきます。
「うちの会社は関係ない」と決めつけず、一度確認してみることをおすすめします。
健康診断実施の要件と例外
省略可能なケース
3ヶ月以内の健康診断結果がある場合の対応
「入社前に健康診断を受けたばかりなんだけど、また受けないといけないの?」
実は、このような場合には別のルールがあります。
入社前3ヶ月以内に受けた健康診断の結果があれば、新しく受け直す必要はありません。
労働安全衛生法では、会社は新しく従業員を採用する時に健康診断を実施しなければなりませんが、入社前3ヶ月以内に健康診断を受けていれば、その結果を使えるということになります。
ただし、すべての健康診断結果が使えるわけではありません。
入社日から3ヶ月以内に受けた健康診断であり、必要な検査項目がすべて含まれていることが条件になります。
たとえば、6月1日入社予定の場合、3月1日以降に受けた健康診断結果なら使える可能性があります。
ここで大切なのが、検査項目のチェックです。
人間ドックや就職時の健康診断では、調べる項目が異なることがあるからです。
必要な検査項目には、身長や体重、視力、聴力の測定に加えて、胸部エックス線検査、血圧測定、血液検査などがありますが、会社や職種によって必要な検査項目が異なることがあり、注意が必要です。
もちろん、医師による診察も欠かせません。
これらすべての結果が詳しく記録されている必要があります。
期間内であれば、前の会社で受けた健康診断結果も使えます。
この場合も同じように、検査項目と実施時期の条件を満たしているか確認が必要です。
飲食業や製造業など、業種によっては追加の検査が必要になることもあります。
また、会社によっては独自の健康診断を求めるところもあるでしょう。
入社が決まったら、人事部門に確認することをおすすめします。
このルールを知っておくと、無駄な受診を防げます。
でも、健康診断は自分の健康を知る大切な機会。
結果を使い回せるからといって、定期的な健康チェックを怠らないようにしましょう。
派遣・短期契約社員に適用される特例
派遣社員や短期の契約社員も入社時の健康診断が必要です。
しかしながら、状況によっては健康診断を受け直さなくてもよい場合があります。
例えば、3ヶ月以内に健康診断を受けていれば、その結果を使うことができます。
「人間ドックを受けたばかり」「前の会社で健康診断を受けた」という方は、その結果を活用できるかもしれません。
派遣社員の場合は少し事情が違い、派遣元の会社で健康診断を受けていれば、派遣先での健康診断は不要となるケースがあります。
ただし、派遣元から健康診断の結果をもらって、派遣先に提出する必要があります。
短期の契約社員はどうでしょうか?
実は、契約期間が短くても基本的には健康診断が必要です。
とはいえ、本当に短い期間だけの仕事や、仕事の内容によっては健康診断が不要なケースもあります。
雇用形態ごとの健康診断の扱いについて、気をつけてほしいことがあります。
どの場合でも、健康診断には決められた検査項目がすべて含まれていることが大切です。
また、飲食業や製造業など、仕事の種類によっては追加の検査が必要になることもあります。
健康診断の要否について迷ったら、派遣会社や人事部門に相談してみましょう。
最新のルールを確認しながら、適切に対応することが大切です。
これらの特例は従業員の負担を減らすためのものですが、自分の健康を守るために行う健康診断だということは忘れないでくださいね。
対象者と実施基準
雇用形態別の対象者と実施時期のチェックリスト
「誰が」「いつまでに」健康診断を受ける必要があるのか、働き方ごとに見ていきましょう。
▶正社員の場合
全員が対象で、入社から1ヶ月以内に受ける必要があります。
ただし、入社前3ヶ月以内に受けた健康診断結果があれば、それを使うこともできます。
▶パートやアルバイトの場合
働く時間と期間がポイントです。
1年以上働く予定で、週の勤務時間が正社員の4分の3以上なら対象となります。
たとえば、正社員が週40時間なら、週30時間以上働く人が該当します。
▶契約社員の場合
1年以上の契約なら必ず必要です。
また、更新して1年を超えそうな場合も対象。
短期の契約の場合は、仕事の内容によって判断が変わってきます。
▶派遣社員の場合
派遣社員の場合は少し特殊です。
基本的に派遣元の会社で受けた健康診断を使います。
その結果を派遣先に提出すれば大丈夫です。
ただし、特殊な作業をする場合は追加の検査が必要かもしれません。
従業員が50人以上いる会社は働き方に関係なく、全員が対象になります。
また、夜勤がある人や危険な作業をする人は、追加の健康診断が必要です。
分からないことがあれば、会社の人事部門に聞いてみましょう。
産業医がいる会社なら、産業医に相談するのもいいですね。
大切なのは、決められた期間内に必要な検査を受けることです。
自分の働き方に合わせて、適切な時期に健康診断を受けましょう。
業種別に必要な追加検査項目の確認
入社時の健康診断で調べる項目は、仕事の内容によって変わってきます。
特に、体に負担がかかる仕事や危険な物を扱う仕事では、追加の検査が必要です。
化学工場や製造業で働く人は要注意です。
鉛や有機溶剤など、危険な物質を扱う仕事では、血液検査や肝機能検査などが追加で必要になります。
これは、体に悪影響が出ていないかを早めに見つけるためです。
飲食店や食品工場で働く人は、食品衛生の面から追加検査があることがあります。
お客様に安全な食事を提供するため、腸内細菌やウイルスの検査を行う企業もあります。
夜勤がある仕事はどうでしょうか。
夜に働くことで睡眠のリズムが乱れやすいため、睡眠の状態やストレスのチェックが加わることもあります。
夜勤がある仕事は体調管理が特に大切ですね。
建設現場やトラック運転手など、体を使う仕事の人には心電図検査が大切です。
重い物を持ち上げたり、同じ姿勢が続いたりすることで、体への負担が大きいためです。
特殊な仕事、たとえば放射線を扱う仕事や潜水の仕事では、それぞれの危険に応じた検査が必要とされることがあります。
▶特に気をつけたい仕事と追加検査
・化学工場:血液検査、肝機能検査
・飲食業:腸内細菌検査
・夜勤業務:睡眠とストレスチェック
・重労働:心電図検査
・特殊作業:作業内容に応じた専門検査
これらの検査は、働く人の健康を守るためにやっておいた方が良いかもしれません。
健康診断の際にきちんと社員の健康状態をチェックしておくことをおすすめします。
「うちの会社は関係ないかな」と思っても、一度確認してみることをおすすめします。
分からないことがあれば、会社の担当者や産業医に相談してくださいね。
注意すべき法的ポイント
健康診断結果の取扱い
健診結果による内定取消の可否と注意点
入社前の健康診断で気になる結果が出た場合、内定を取り消していいのでしょうか。
実は、この判断はとても慎重に行う必要があります。
内定を取り消すことは、法律上「解雇」と同じように考えられます。
そのため、「これはしかたない」と誰もが納得できる理由が必要です。
例えば、重い荷物を運ぶ仕事なのに、医師から「重いものを持ってはいけない」と言われた場合や、食品を扱う仕事なのに、感染症の治療が必要な場合などです。
このように、その仕事を安全に行えない状況であれば、内定取り消しとする前に、企業と雇用者との間に十分な話し合いが行われるべきです。
健康上の問題がどの程度仕事に影響するのか、別の仕事なら大丈夫なのかなど、こうした確認が大切です。
工夫次第で解決できるかもしれません。
重い物を持つ仕事が難しければ、デスクワークを中心とした仕事に変更する。
夜勤が厳しければ、日勤専門にする。
このように、その人に合った働き方を一緒に考えることが理想的です。
判断に迷ったら、産業医に相談するのがおすすめです。
専門家の意見を参考に、その人の健康状態と仕事の関係を冷静に考えましょう。
もし安易に内定取消をすると、「不当解雇」として訴えられる可能性もあります。
これは会社にとって大きなリスクとなります。
大切なのは、その人の健康と仕事の両立を考えること。
すぐ結論を出す前に、できる対策を十分に検討してから判断するようにしましょう。
個人情報保護法に基づく健診データの適切な管理
健康診断の結果をどう扱っていますか?
実は、これはとても大切な個人情報です。
その人の体の状態が全部分かってしまう情報ですから、取り扱いには十分気をつけないといけません。
健診データを集めるときは、まず本人に説明するのがポイントです。
「このデータは、あなたの健康管理に使います」「産業医と担当者だけが見ます」といった具合に、使い道をはっきり伝えましょう。
データの保管場所も要チェックです。
「誰でも見られる」という状態は絶対NG!
パソコンで管理するならパスワードは必須ですし、紙の資料は、鍵のかかる引き出しに保管するのがベストといえます。
たとえば、部下の健診結果を上司に見せる場合。
「この情報を共有する必要があるのかな?」とちょっと立ち止まって考えてみましょう。
外部の人に見せるときは、必ず本人に確認を取るのもお忘れなく。
もう使わないデータは、きちんと処分しましょう。
紙はシュレッダーで、パソコンのデータは完全削除です。
「まあ、いいか」という気持ちが、情報漏れの原因になることも。
「健診結果は、個人の大切な情報」という気持ちを忘れないこと。
それさえ意識していれば、おのずと慎重な扱いになるはずです。
取り扱いに迷ったときは、会社の担当者や産業医に相談してくださいね。
取り扱いのルールは変わることがあるので、最新の情報を確認しながら進めていくのがベストです。
まとめ
実践的なポイント
雇入れ時健康診断の重要チェックポイント
入社時の健康診断って、いろんな決まり事があって大変ですよね。
でも、これは単なる手続きじゃありません。
みんなが安心して働ける職場をつくる第一歩なんです。
雇入れ時の健康診断は、労働安全衛生法に基づき、以下の11項目が必須とされています。
1.既往歴および業務歴の調査:
過去の病歴やこれまでの業務内容を確認します。
2.自覚症状および他覚症状の有無の検査:
本人が感じる症状や医師が確認できる症状の有無を検査します。
3.身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査:
基本的な身体測定と感覚機能の検査を行います。
4.胸部エックス線検査:
胸部のX線撮影を行い、肺や心臓の状態を確認します。
5.血圧の測定:
血圧を測定し、循環器系の健康状態を確認します。
6.貧血検査(血色素量および赤血球数):
血液検査により、貧血の有無を調べます。
7.肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP):
肝臓の酵素値を測定し、肝機能を評価します。
8.血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド):
血液中の脂質レベルを測定し、脂質異常症の有無を確認します。
9.血糖検査:
血糖値を測定し、糖尿病のリスクを評価します。
10.尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査):
尿中の糖や蛋白の有無を調べ、腎臓や代謝の状態を確認します。
11.心電図検査:
心電図を記録し、心臓の電気的活動を評価します。
これらの基本項目に加え、職種によって追加の検査が必要となる場合があります。
受けるタイミングは入社後すみやかに(1ヶ月以内が望ましい)とされています。
ただ、3ヶ月以内に受けた結果があれば、それを使えることも。
正社員はもちろん、パートさんや契約社員も対象になることがありますので、健診の担当者によく確認することが大切です。
気になる結果が出た人には早めに声をかけ、健康状態によって仕事の内容を見直すなどの対応も検討する必要があるでしょう。
健診結果は大切な個人情報ですので、むやみに人に見せたりしないよう注意が必要です。
病院は会社の近くにあると便利ですね。
費用も、助成制度や割引を使えば、そんなに心配いりません。
一番大切なのは「健康的に働くため自分の健康を守る」「従業員の健康を守る」という気持ちです。
その思いを忘れずに、一つ一つ丁寧に進めていきましょう。
健康診断関連の便利な情報ツール
健康診断関連の便利な情報ツール
入社時の健康診断をよりスムーズに進めるために、活用できる情報源をご紹介します。
知っておくと心強い情報源が、厚生労働省のホームページです。
「労働安全衛生法」や「雇入れ時の健康診断」で検索すると、基準や進め方について詳しく解説されているページが見つかります。
法律の説明も分かりやすく書かれているので、まずはここをチェックしてみましょう。
各都道府県には産業保健総合支援センターがあります。
ここでは、無料で専門家に相談できるだけでなく、健康診断に関する資料ももらえます。
特に中小企業の方は、積極的に活用してみてください。
不安なことがあれば問い合わせてみるとよいでしょう。
意外と知られていないのが、健康保険組合のサービスです。
加入している健康保険組合のホームページを確認してみてください。
健康診断の費用補助や、保健師による健康相談など、役立つサービスが用意されていることが多いです。
ここまで、入社時の健康診断について詳しく見てきました。
ルールは多いですが、従業員の健康を守り、安心して働ける職場をつくるための第一歩。
このページを参考に、より良い健康診断の仕組みづくりを始めてみませんか?